アンダートン・ボート・リフト Anderton Boat Lift
イギリスの運河の高低さ解消のシステムについては、昨年訪れた
ネプチューンの階段(Neptune's Staircase)の項を参照いただくとして、
ボートリフトの一方の雄がフォルカーク・ホイール(The Falkirk Wheel)が21世紀のランドマークであるなら、
もう一方の雄が大英帝国運河時代のモニュメントといえるアンダートン・ボート・リフトだ。
こういった機械物に滅法目がない。昨年、フォルカーク・ホイールの情報を調べる中でアンダートン・ボート・リフトの存在を知って、是非とも訪ねようと記憶に留めた。
(昨年のフォルカーク・ホイール訪問記はこちら)
今回のエリアとしては少し外れているが、ここまで来ていて見逃すわけには行かない。他をカットしても訪れねば。
アンダートン・ボート・リフトはウィーヴァー川(River Weaver)とトレント=マージー運河(Trent and Mersey Canal)の高低差15.2mを解消するため
1875年に建造された世界最初の船舶昇降機だ。高さ18.3m、長さ22.9m、幅14.9mの大きさだ。
ビジター・センターから見下ろしても、下から見上げても荘重たるものだ。それゆえ、運河の大聖堂“Cathedral of the Canals”とも呼ばれるが、
まさに言いえて妙の表現だ。このモニュメントの前に声もなく立ち尽くすのみだ。
ボート・リフトの開通前はチェシャー(Cheshire)の岩塩とストーク=オン=トレント(Stoke-on-Trent)の陶器の交易はこの地でクレーンやシュートを用いて荷役していたのだ。
ボートに載せたまま行き来できれば輸送時間や経済効果は大きく上がるというわけだ。
この手のものは”実際に乗ってみるとさほど楽しいものではない”というのが経験則だ。ボートに乗らなくても一人£2でリフトの下まで入場できるというので
ビジター・センターでアイスクリームをいただきながら次のボート・トリップの出発時間を待つ。
オリジナルのリフトは腐食のため1983年に閉鎖されたが、2001年から修復が始まり、2002年に再開されたものだ。ボートを載せるタンクの大きさは
長さ22.9m、幅4.7m深さ2.9mあり重さは空で91トン、水を浸すと252トンになり、
ナローボートなら2隻が載るという。アルキメデスの原理でボートが載っても252トンで2つのタンクが釣り合う計算だ。
そのタンクは直径0.91m長さ15.2mの水圧ピストンで押し上げられる仕組みだ。
ボートの昇降の手順は下の写真の通りだ。ウィーヴァー川に係留していたボート(左)が下のタンクに載り入れる(左から2、3枚目)。
この時上のタンクにもトレント=マージー運河からボートが乗り入れる。タンクの扉を閉じ水圧ピストンの力でタンクが昇降される(右から2枚目)。
上下入れ替わったところでタンクの扉が開き、ボートが運河に出てくる(右)という具合だ。楽しくて時を忘れる。やはり外から見るに限る。(妻には必ずしも楽しくないようだ・・・)
Address | Lift Lane, Anderton, Northwich, Cheshire CW9 6FW |
Telephone | 01606 786777 |
Web Site | Anderton Boat Lift |
詳細はWeb Siteなどでご確認ください。
旅行記もご覧ください。